若手リーダーたちが直面した3つの壁と、それらをどう乗り越えてきたかを聞く連載。今回登場するのは、一般社団法人Social Innovation Japanを立ち上げて、コミュニティを軸に社会課題に取り組むマクティア マリコさんです。上編では、マクティアさんが起業する前に直面した壁について聞きました。
(上)日本の環境意識に危機感「自信ナシ」を越えて起業した訳 ←今回はココ
(下)「社会を変えるには自分もwellに」ある起業家の決意
「こういうテーマは日本の読者に読まれにくい」への危機感
日本で、環境汚染や気候危機などの環境問題について議論したり、環境問題の解決に取り組んだりすることが当たり前の社会をつくりたい――。
そんな思いで、2017年に一般社団法人Social Innovation Japan(ソーシャル・イノベーション・ジャパン、SIJ)を立ち上げた、マクティア マリコさん。SIJはコンサルティング事業や人材育成プログラムなどを通して、個人や組織の環境に対する意識や行動を変えようと取り組む団体。中でも力を入れているのが、19年に開始した、使い捨てプラスチックの消費削減をミッションとした日本初の無料給水アプリとプラットフォーム「mymizu」の運営だ。
mymizuでは、個人が気軽にアクションを起こしやすいように、無料でマイボトルに給水できる場所を探せるアプリを開発。公共施設や飲食店だけでなく、mymizuの理念に賛同したホテルや美容院、靴・洋服店などが参加し、日本国内と世界50カ国合わせて20万カ所以上の給水スポットが登録されている(23年5月9日時点)。アプリ開発のほかにも、個人や組織に向けてサステナビリティや循環経済をテーマとしたワークショップ、セミナーを実施する。持続可能な取り組みが評価され、20年に環境省が主催した「第8回グッドライフアワード」で環境大臣賞を受賞した。
マクティアさんが起業を決意したのは17年。だが、踏み出すきっかけとなった出来事は、新卒で入社した中日新聞社ロンドン支局で働いているときにまで遡る。
マクティアさんが自身の関心テーマである環境問題について取り上げようと提案したところ、「こういうテーマは日本の読者に読まれにくいんだよね」と記事にすることができなかった。そのとき、「英国では日常的に環境問題について議論する習慣があるのに、なぜ日本にはないのだろう」と、大きな疑問と危機感を抱いたと振り返る。日本ではなぜ環境問題にニュースバリューがないのかもっと知りたい、と新聞社を退職し、14年に日本へ。